『昔話の深層』
河合隼雄
妙福寺トップページ > 仏教のススメ > お釈迦様のプロフィール
お釈迦様は実在した一人の人間です。インドの北部、現在のネパールで、紀元前5,6世紀頃、釈迦族の王子として生まれました。
王子といえば、なんともうらやましい立場だと私たちは考えてしまうのですが、人には共通の悩み・苦しみがあります。生まれてきた者は必ず年老いてしまいます。老いてくれば、病気も多くなりますし、そうでなくても、体力は落ちるし記憶力も衰えます。そして私たちは例外無く、死んでしまいます。誰一人として逃れることのできない問題です。お釈迦様は、こういう悩みに特に敏感な方だったのでしょう。もしかしたら、王子としての生活が何不自由のない生活である分、より深刻に感じたのかもしれません。
これらの悩み・苦しみは私たちに大なり小なり起こるものです。しかしここからが、人の生き方の分かれ道です。まあいいやと軽く考えてしまう人。悲観し過ぎて人生を捨ててしまう人。だったら今を楽しもうと好き勝手に生きようとする人。当時のインドでも悲観主義や楽観主義など、さまざまな考え方の人々がいました。
お釈迦様が、この悩み・苦しみの克服を求めて、修行を始めたのは29歳のときです。修行のためには、執着となるものを捨てる必要があります。王子としての立場・地位を捨て、妻や息子からも離れ、すべてのものを捨ててお城を出ました。
お城を出たお釈迦様は、2人の仙人を訪ねて、教えを聞きました。しかし、納得する答えを得ることはできません。それから6年間、自ら答えを見つけようと、苦しい修行を重ね、心の乱れを抑える苦行、断食の苦行、呼吸を止める苦行などを行いました。年月が過ぎて、お釈迦様の体はやせ細り、骨と皮だけの姿になってしまいましたが、結局このような苦行では悩みや苦しみは解決できませんでした。
35歳になったお釈迦様は、大きな木の下に座ってこれまでのことを振り返りました。
恵まれすぎた王宮での生活、過酷すぎたこの6年の苦行の生活。あまりにも極端だったこの2つの経験が、実は問題解決の大きな糸口となりました。「極端な生活は極端な考え・心を生み出してしまう」この気づきをきっかけに、ついに真理に目覚め“さとり”へ到達しました。そしてお釈迦様は、“さとり”の内容を最初わずか5人の人に伝え、その後45年の間、各地方へ教えを説いて回り、80歳のときに、静かにお亡くなりになりました。