『昔話の深層』
河合隼雄
妙福寺トップページ > 仏教のススメ > 3時限目「お釈迦様の大発見。3つの真理とは?」
仏教には、これがお釈迦様の正当な教えですよ!という3つの教え(三法印と言います)があります。
いくら仏教的な顔をしていてもこの3つの教えに反していればお釈迦様の教えとは言えないという大原則です。
ではその3つの教えを紹介しましょう。
世の中のあらゆるものは変化を繰り返していて、不変なものや絶対的なものは存在しない。
実はこれが〝人生は苦しみ〟の原因だとお釈迦様は説いています。
世の中の物事は常に変化を繰り返し、同じ状態のものは何一つ無いにも関わらず、私たちはやっと得た地位や名誉、また人間関係や自分の肉体にいたるまで、さまざまな自分を取り巻く環境に対して不変を望み、このままであって欲しいと願います。
これを仏教では〝執着〟と呼び、この執着が苦の根本原因であると説かれています。
自然環境は、それぞれの命が影響を与え合い絶妙なバランスの上に成り立っています。
森から昆虫が消えれば、森のすべての生命体は危機に瀕します。
これと同じように、世の中のあらゆるものは、すべてがお互いに影響を与え合って存在しています。
ですから、仏教では、「自分という存在すら主体的な自己として存在するものではなく、互いに影響を与え合う関係性の上に“生かされている”に過ぎない」と考えます。
また、「全ての存在が相互関係の中の現象である」とする考えかたを、“空”と呼びます。
まったく存在しないということではないので、“無”ではなく“空”なのです。ちょっと難しいですね。
ここでは、いろんなものに自分は生かされている存在なのだと思っていただければ十分だと思います。
“諸行無常”“諸法無我”を正しく理解し身につけた上で世の中を見ることができれば、あらゆる現象に一喜一憂することなく心が安定した状態になる。
これが仏教の目指す“さとり”の境地です。
この3つの教えが仏教の大前提です。
以上をもう一度要約すると、世の中のあらゆる出来事や物質は常に変化し、お互いに影響を与え合う相互関係にある。それにも関わらず人間はありとあらゆる物事へ不変を望み、そこへ執着してしまう。しかし世の中はすべてが無常であると言うことが真理であるから、なに一つ思い通りになるものは無く、望んでもなにも手に入らない。
仏教ではこのジレンマによって苦しみや悩みが生じると説いており、この3つの原則を踏まえた真理を“縁起の理法”と呼びます。