進退 此に谷り。
『報恩抄』/建治2年(1276年 55歳)
止めんとすれば仏の諫暁のがれがたし。
進退此に谷り。
進退窮まった場合、その後の行動に、その人の真価が現れます。
この聖語は、日蓮聖人5つの重要な書のうち『報恩抄』の一節です。
聖人は一切世間を幸せに導く教えを求められ、法華経・お題目の信心に到達されました。それを世間に説けば、必ず受難するという経文と、教えを知ってそれを隠してはならないという釈尊の諌めの狭間で悩まれ、進退窮まりながら、立教開宗されたのです。
それからは艱難辛苦の連続でありました。とくに9月12日は、日蓮聖人の四大法難のうち「龍口法難」といって、首を刎ねられる坐に着かされ、刀を振り落としかけた瞬間、奇跡的に逃れられ、聖人の信心の正しさが証明された聖日です。
凡夫の私達は、常に迷います。悩みます。追い詰められます。これは、強さの象徴のような聖人でさえ進退窮まるときがあったのですから、当然のことです。そのとき聖人を動かしたのは、釈尊への絶対的「信」でありました。
それは、とりもなおさずお題目の信心に身を任せることであります。私達に、どんなに辛いことが起ったとしても、お題目に身を任せる信心に入った瞬間、必ず未来が開けるのです。
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