『昔話の深層』
河合隼雄
妙福寺トップページ > 妙福寺PRESS > 妙福寺あれこれ > 立教開宗会でモヤモヤ考える。
2011/04/28
本日4月28日は“立教開宗”といって、日蓮聖人が初
めてお題目を唱えた日です。
建長5年、千葉県鴨川市の旭ヶ森に昇る朝日に向か
い、法華経を広める誓いを立て「南無妙法蓮華経」と
お唱えされた日です。
全国の日蓮宗寺院では“立教開宗会”という法要が営まれます。
しかし今年の4月28日は、3月11日に発生した東北地方大地震でお亡くなりになられた方々の49日忌にあたり、開宗会だけにとどまった寺院は少なかったのではないでしょうか。
日蓮宗宗務院でも全国寺院へ回向文をお配りし、28日は各寺院でのご供養をお願いしました。
もちろん、妙福寺でも立教開宗の回向と共に49日忌にあたる方々への回向をさせて頂き、亡くなられた方々のご冥福と被災地の早期復興を祈願致しました。
震災から約1ヶ月半が過ぎ、まだまだ混乱が続く状況に変わりはなく、復興支援への関わり方も様々で、皆自分の出来る事を何とか支援に繋げたいという気持ちをお持ちだと思います。
現地に入り体を張って支援をする方、現地に入る事は出来ないが後方支援をする方、何が出来るか?何をしたらよいか右往左往する方・・・。
その人の環境や状況で支援の方法は様々であり、それで良いなと思っております。
私も自分には何が出来るのか?と、開宗会を機に改めて考えてみますと、やはり〝祈り〟と恒常的な〝心的ケア〟ではないかなと思います。
短期的な支援から中長期的な支援に移っていく中で、建物やインフラ等のハード面は復興していきますが、被災者のソフト面(精神面)も同時にケアされなければ地域の復興はあり得ないと思いますし、ハード面は地域行政や国との関係性の中で動くものだと思いますが、ソフト面は僧侶として当然の事であり、最も長期的に必要な部分であると考えるからです。
未だ行方不明者が11,432人と発表されております。おそらく家族や親族が行方不明の方々は希望と悲しみの狭間で喪に服すことすら出来ない状況かと思います。大変辛い状況が続き、とても復興という気持ちには向かないかもしれません。私達は、急ピッチで進む復興の影に隠れ緩やかに歩む、この様な方々と共に歩き側に寄り添う事が大切ではないかと感じます。
今回の様な大規模な災害ではPTSD(心的外傷後ストレス障害)の心配もあり、特に子供には、その影響が多々あるのではないかと言われております。太平洋戦争や阪神淡路大震災の時にもPTSD患者が急増したとあります。しかしその一方で数年ないし十数年経過してから当時PTSDであった人々を調査すると、過去の苦難を乗り越えて、より成長した形で大人になったという人々がほとんどだった、という研究結果があります。つまりPTSDのようなトラウマ体験が人格形成の上でプラスに働き、人間的に大きく成長させるPTG(外傷後成長)という現象が認められるということです。
もちろん今の現状で、今回の体験を人生の糧としてもらいたい。とは毛頭思ってないし、今後言うつもりもない訳ですが、PTSDからPTGへ転換する要因には、長期に渉って相談する相手がいたり、心を許せる存在がいたという事が重要だと思います。
仏教は転換の教えだと思っております。苦集滅道とありますが、決して〝苦〟を無くすのではなく、〝苦〟を生きるエネルギーに転換させる事で、結果として苦が滅せられるのだと解釈してます。
被災者のトラウマになる様な体験を様々な形で、長期に渉り寄り添い、少しでも気持ちを和らげる事が出来れば。願わくば生きる元気を取り戻してもらえれば・・・。
そのようにして仏様の教えを活かせなければ、生きた仏教では無くなってしまうのではないかと。日蓮聖人が「南無妙法蓮華経」と決意を固めた日に、こんな事をモヤモヤ考えた今日この頃でした。
妙福寺あれこれ | Comments(0)