『昔話の深層』
河合隼雄
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2011/03/03
2011年2月22日、NZ最大都市クライストチャーチでM6.3の強い地震が発生し、残念ながら多数の犠牲者が出てしまいました。
救援活動・身元確認作業は未だ続いており、2日には日本人家族が現場を訪れたとのニュースもありました。
そのような中、地震直後に倒壊したCTVビルで救助作業にあたり、富山市立富山外国語専門学校生の升谷文香(のりか)さん(19)と奥田建人さん(19)を救出した現地の消防士、ポール・ロッドウェルさん(50)の、会見があり、当時の救出状況をこの様に語っていました。
地震発生から約2時間後、CTVビルの現場に到着したロッドウェルさんらのもとに情報が入った。「日本人が取り残されている」。専門学校生らがいた4階部分を目指して突入。現場はすでに火災が起きており、有毒そうな煙が上がっていた。
細身のロッドウェルさんが瓦礫のすき間を進むと、約60センチの空間があり、そこには複数の生徒が閉じこめられていた。その中の一人が、升谷さんだった。椅子に座っていたときに被災した升谷さんは、床が抜け落ちて左脚がコンクリート片に挟まれ、身動きが取れなくなっていた。
「ノリカ」「ルイ」「トム」。升谷さんや周囲に生存していた生徒らは絶えず声を掛け合いながら、懸命に励まし合ったという。
暗闇に包まれる中、升谷さんの救出には9時間も要した。散乱した周囲の家具やテーブルを少しずつ取り除きながらの地道な救出作業。「少しでも恐怖や不安を取り除いてあげたかった」というロッドウェルさんはこの間、升谷さんの手や足をさすりながら、勇気づけていた。
最初に別の女子生徒が救出され、升谷さんの順番に。しかし、升谷さんはとても怖がり、「お願いだから脚を切らないで」と何度も訴えたという。「大丈夫。私を信用して」とロッドウェルさんが声をかけると、「本当ですよね」と不安そうに聞き返してきた。その後に救出され、病院へ搬送された。
さらにその奥にいたのが奥田さん。機械を使ってコンクリート片などを切り出しながらの救出となった。
救出された生徒達にとって、ロッドウェルさんは、まさに地獄に仏と言っても過言ではない存在だったと思います。そして同じ様に、瓦礫の中に閉じ込められていた生徒は、お互いに励まし合い助けを待っていた、それは心強い存在であり、それもまた仏さんのような存在であったと思います。
ロッドウェルさんは会見の最後に、救出される際、右脚の一部を切断することになった奥田さんの様子を「彼は自分の周りの様子を的確に伝えていた。彼もヒーローだ」と賞賛しています。彼の指示がなければ、また状況が変わっていたとも考えられます。
日蓮聖人は「私たちの成仏(仏になる)」について〝本尊供養御書〟でこのように述べています。
〜建治2年(1276年 55歳)〜
『仏の御目には一一に皆御仏なり』
仏さんとか成仏と聞くと、亡くなった後を想像する方もいると思いますが、本来の成仏は生きている間にするものです。
しかも選ばれし者や優秀な人だけが仏さんに成れるのではなく、“誰でも仏になれる”と言うのが法華経の教えです。
さらに法華経では、難しい教義や理論で仏さんになるのではなく、〝行為〟によって仏さんになるのだと説かれています。
瓦礫の中で、生徒達お互いが励まし合い、みんなが助かる様に自分の出来る事を精一杯行って頑張った。この気持ちが大切だと思います。周りの幸せを願う事、自分一人幸せであれば良いという気持ちを捨てる事。これが回り回って自分の幸せになる。この様な気持ちをもって行う〝行為〟が仏さんへの階段です。
この地震によって被災された方が大勢いらっしゃいます。ご家族ご親戚のお気持ちを察すると胸が張り裂けそうになります。しかし私はその中で、今回の地震や周りの人々の行動で大切な事、忘れていた事を思い出させて頂いたような気が致します。
自分の幸福は自分で作り出すものではないですね。
最後に、この度の地震でお亡くなりになられた方々のご冥福、並びに未だ行方が分からない方々の一刻でも早い発見をご祈願致します。 南無妙法蓮華経
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