『昔話の深層』
河合隼雄
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2020/01/25
ちょっとした健康オタクの私が、少し前から気になって生活に取り入れている事があります。
それは「プチ断食」
巷の健康に関する本はグングン発行部数を伸ばしています。
健康寿命を意識する昨今、やはり身体に関する情報はブームですね。
ミーハー精神に則り、その波に乗りながら色々試しては挫折し、試しては挫折するの繰り返しですが、フッと思いました。
健康になる食事情報って「〜を食べると脳に良い、〜を飲むと血糖値が正常になる」など、プラスの食生活が多いなと思いませんか?
〜を食べる、〜を飲むと良い、つまり足し算の考え方ですね。
しかし、昨今ジワジワと注目されているのが「空腹」の効果です。
何かを食べる飲む、のではなく「食べない時間を作る」「空腹の時間を楽しむ」という引き算の考え方です。
以前から、酵素ファスティングや断食道場などにより、空腹の効果は注目されていましたが、2016年に東京工業大学の大隈良典教授が「オートファジー」の研究でノーベル生理学・医学賞を受賞してから、その注目が加速したのではないでしょうか。まさに世界が注目する機能です。
オートファジーとは「古くなった細胞が新しく生まれ変わる」体の仕組みのことです。
定期的に、まとまった空腹時間を作る事で、食べ過ぎがもたらす害が取り除かれ、加齢や食生活によるダメージがリセットでき、オートファジーが活性化して体が、内側から若々しく蘇ります。
この「空腹」が身体にとって良い効果をもたらす、というのは私も修行時代の経験から納得しています。
日蓮宗には加行所(通称 荒行堂)という修行場があります。
これは11月1日〜2月10日まで、お寺の御堂に結界を張って籠り、ひたすら読経と水行、書写に明け暮れます。この修行の時の食事は1日2回、朝5時と夕方5時に重湯(お粥より水っぽい)一杯です。
これで100日間過ごします。
さすがに最初の1〜2週間は空腹過ぎて目眩もしますし、正直頭の中は食べ物で一杯です。
もし脳内メーカーで頭を覗いたら「白米、ラーメン」で満杯でしょう。
しかし、それが過ぎると次第に空腹は心地よくなり、頭もクリアになってきます。
こんなに厳しい修行にも関わらず、修行を終えた後は、以前より健康になっている僧侶も多いです。
これは「食べ過ぎない」という事が深く関わっていると私は思っています。
お釈迦様は80歳まで長生きしました。
2500年前のインドの環境を考えると、とても長寿であったと思います。
そんなお釈迦様の食生活は、何でも食べて午後からは食べない、という形です。
お釈迦様を含む出家者の集団は、早朝に托鉢に出かけます。
そして村々で信者さんに食べ物を施してもらい、それが食事になります。
当然あれが食べたい、これが嫌いと選り好みは出来ません。
それを午前中の間に皆で分けて、午後以降は食事しないというのが基本的なスタイルでした。
お釈迦様は2500年前から「空腹」がもたらす心身へのメリットを知っていたのかもしれませんね。
何か体調が優れないな〜とお悩みの方、足し算から引き算の食生活を考えてみてはいかがでしょうか。
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