『昔話の深層』
河合隼雄
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2012/10/26
ご先祖さまから、お墓参りについて一言いわせてくれ。とお手紙が届いたのでお伝えしますね。
前略
みなさんそろって会いに来てくれるのはうれしいが、くれぐれも無理をしないでほしい。大雨であろうが、家に病人がいようが、とにかくお墓に行かなくては、というのでは、こちらも安らかではありません。一人でも二人でも、都合のいいとき、お寺にお願いしてありがたいお経を聞かせていただき、それからお墓に来てください。待ってます。
買わなくてもいい品までお寺の近所で買ってくるには及びません。お線香・ろうそく・お花・掃除道具のタワシや雑巾、それから小さなホウキも。私たちの好物をひと品かふた品持ってきてくれれば、もうそれで最高。
私たちにとって何よりうれしいのは、お墓とその周りをきれいにしてくれること。
お墓のコケを落とすとよくないことがあるというが、これは迷信。
石塔や花立てをきれいに、ついでに、目ざわりな落ち葉や雑草も取り除いてもらえればさっぱりするのですが・・・。
石塔に水をかけるのは、霊山浄土にいる私たちが渇き苦しむことのないように、という思いやりと、お墓をきれいにすることと、二つの目的があるらしいけれど、いくら私たちの中にお酒の大好きな人がいるからといって、石塔の上からアルコールをかけて、そのまま帰ってしまうのはやめて下さいね。隣近所の仏さまににおいがぷんぷんではご迷惑だし、こちらのお墓にも虫が集まってきたりして気持ちが悪いし・・・。
最近は、色とりどりのお供えを並べてくれて、まぁ、もったいないとは思いますけれど、これもアルコールと同じで、においの強い食べ物やら、火のついたタバコやらは、はた迷惑ですからね。ああ、それから、お供えしたものは、持ち帰ってほしい。あとで猫だの、野鳥だのがやってきて、お供えを食べたりすると、二十四時間たたないうちに、お墓の周りがきたなくなりますから。
みなさんそれぞれ忙しい中をここまで出掛けて来る事情はよく分かるけど、お墓におじぎしてさっさと帰ってしまうのでは、私たちはがっかりですよ。
毎日お墓を守ってくださるのは、お寺なのです。
お寺にちゃんとごあいさつをすませてから、私たちに会いに来て下さい。くれぐれもお願いしますよ。
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