気温が高めで、秋らしさをあまり感じなかった先月でしたが、少しずつ涼しくなり秋の深まりを感じます。
皆様はどのような秋を満喫されていますか。
読書の秋なので色々と積ん読をひっくり返しながら読み散らかしています。
私はある程度どこでもいつでも本を読むことが出来るのですが、
静かな夜一人で、疲れた時に読みたい、むしろその時にしか読めない本というものもあります。
それは「歌集や詩集」です。
140文字よりも少ない文字数で、自分の感情や世界観を伝える歌はじっくりと向き合わないと、なかなか消化出来ないのです。
誕生日に友人から本をプレゼントされました。
作者の宏之さんは1982年佐賀県生まれ。私と同じ年です。
2008年に第一歌集『ひとさらい』を刊行しますが、その1年後の早朝に深々と降り積もる白雪とともに、突然旅立たれた歌人です。
長い自宅での療養生活を送る中で自分の体と心の調子を整えながら音とコトバを紡いでいかれたのでしょう。
そのコトバは、澄み切った透明感と生命の輝きが溢れた唯一無二のコトバです。
「真水から引き上げる手がしっかりと私を掴みまた離すのだ」p.7
汗ばむ夏の日、真水に手を浸し涼をとり、そこから引き上げた冷えた手で自身を抱きしめ、生命を感じ日常に戻っていく。という力強さもありながら、
大切な人が水に浸かっている、そこへ手を差し伸べ引き上げるが、また私の手から離れていく、という切なさや悲哀も感じます。そこへ作者の日常なんかも勝手に重ねて色々想像してしまうものです。
どんな本でも自分がどのように感じるか考えるか、が大切だと思いますが、殊更に歌は十人十色の感じ方があると思います。
その答えのなさ、正解のなさが魅力ですし、今の私に必要なのだなと感じます。
正解のないモノにじっくりと向き合い、色々な感じ方を楽しんでいく。
秋の読書って言っても、何か読むものないな〜とお嘆きの方、今年は「歌集」なんかいかがでしょう。
住職日記, 妙福寺おすすめ本 | Comments(0)