『昔話の深層』
河合隼雄
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2010/12/13
皆さんは神子原米(みこはらまい)という高級ブランド米をご存知でしょうか?
1俵42,000円の高級ブランド米であり、さらにローマ法王への献上品として正式に認可されているお米です。石川県羽咋市神子原地区は小さな集落であり、豪雪地です。さらに地滑りも起こる限界集落と呼ばれる地域です。
人口も15年で半減し高齢化が止まらないこの神子原地区であるが、たった1年で棚田米を高級ブランド化し、空き農家に移り住んで〝農〟あるスローライフを楽しむ都会の人々を誘人したり、東京の学生達の援農合宿、人工衛星による高品質米の栽培...
これらを仕掛けた張本人は高野さんという人物です。
北陸お寺巡りの最終日、12月1日は福井から石川へ移動し、石川県羽咋市の羽咋市役所農林水産課課長〝高野誠鮮〟(たかのじょうせん)師にインタビューしました。何故お役所の課長に?と感じるかもしれませんが、実は日蓮宗寺院の住職でありながら、スーパー公務員であり、スーパークリエイターなんです。過疎地域活性化の星のような存在ですね。
高野さんは地域の活性化は人間の体に例えるとリハビリだと言います。
人間の体全体が国だとすると末端の手や足が村や集落である。過疎を切り離すという事は自分の手足を切断して全体が健全になったと喜ぶようなものだ。私たちが目指したのは切断ではなくリハビリだった。今は萎んで退化した左手も動かしていくうちに血が通い筋肉も付き、しっかりした手に戻る。血液は地域で言えばお金であるが、お金を村に回すのが目的では意味がない。それをしっかり循環させる筋肉も同時に鍛える事で初めて健全な体へと戻るという発想なんです。
2元論的考えではなにも生み出さない。社会を構成する最小単位は人であり、全て繋がっていると考えるのが仏教です。
この法華経の理念に基づく地域活性の極意を伺いながら、僧侶として、その行動が今問われているのでは?と感じました。
役所で2時間程度の話を伺い、農村のど真ん中にある神音カフェへと昼食を取りに出かけました。道は田畑が広がり平野が少ない山間部。
こんな所に人気のカフェなんて・・・と思っていると確かに存在しました。
しかも平日というのに満員。材料も売り切れという事で、中だけ拝見させて頂き、近くの〝神子原農産物直売所〟へ行き、天ざるを頂きました。
この天ぷらも地元の収穫野菜らしく、とても新鮮で美味しく愛情を感じる味でした。
この2店舗とも高野さんプロデュースです。
神音カフェの店長は高野さんが口説き落とし、色々バックアップしたらしいですが「看板を出さない」というのがキーポイントだったらしいです。
看板があると近くを通って看板見て満足してしまうが、あえて設けない事で中まで入りたくなるという心理を利用しているとの事でした。
http://kanon-cafe.seesaa.net/
直売所は農業所得の向上と農家自らが生産物に価格を付けて直接消費者に届ける為に必要不可欠な施設であると同時に、限界集落からの脱却と、自立・自活出来る農村集落づくりにあります。
特徴の一つに、出荷した農家が自分の売上げとする事ができ、農家のやる気に火が点くシステムの導入にあります。
通常POS(ポス)と言われますが、ここに導入されているシステムは直売所専用で北陸三県では初めてらしいです。
農家自身が自立する為に〝生産〟〝管理〟〝販売〟を全て満たした直売所、農業法人(株)「神子の里」を設立し、独立営業をしています。
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