人の心は時に随つて移り、物の性は境(きよう)によつて改まる。
『立正安国論』
文応元年(1260)39歳
今年も、もうすぐ終わります。振り返れば事件や事故が多い一年でした。
毎年反省し、来年はよりよい年にしたいと誰もが祈ります。しかし、私たちは同じことを繰り返しているように思えます。
それは、このご遺文に示されたように、せっかく目覚めた決心が時の流れで移ろい、環境の変化によって評価も変わるからです。
これは真実を見定めていないから起こることです。例えば今来ている冬服は温かく心地好いものですが、夏に着ると暑くて大変です。冬服が変化したのではなく、時が移ろい環境が変化したので、価値が変わったのです。
私たちは日々の生活に流され、その時々の価値観に追われています。それが流行なのですが、たまには流れに棹差して止まり、自己を検証する必要があります。なぜならば、どこに流れて行くのか分からなくなるからです。その止まるための棹が信仰です。信仰によって止まって周囲を見渡し、流れを確かめ、方向を見定めて棹に力を込めて進み、よりよい未来に向かって進んでいきたいものです。
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